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翻訳されない声たち -RightsConにおける多言語スペースの構築のために

Translation by: Watanabe Momoko

インターネット利用から機械翻訳、アプリの設計に至るまで、言語は進化し続ける生態系のようなデジタルの世界と密接に結びついています。言葉を理解することは自分らしさや自己感覚、そして他者との関わりを理解することであり、言語とは、人との関係性を築き自分たちの文化と歴史を守るために必要不可欠な能力です。

今日のデジタル社会において言語的な多様性や利便性を欠くことは、大きく分けて2つ影響があります。1つ目に、なによりもまず、それらの欠乏によって英語(とほかの、支配力もしくは特権性が強い言語)が膨大な量の利用可能なコンテンツを制御するようになり、人や情報を結びつけるための技術が、残響室(エコーチェンバー)のように特定の意見や考え方だけが受け入れられる閉鎖的な場に変わってしまいます。不平等な力の構成を増幅、強化させることにつながってしまうのです。現在、世界の人の5パーセントが英語を母国語とする一方で、それらの人々はウェブ利用者の50パーセントにあたるのです。このゆがんだ現実は、無料かつ公正で、開かれたインターネットという基本的原理に反します。

2つ目に、言語的排除は情報の流れとそれらの共有や消費の方法を制御し、不正確で偏った視点をはびこらせる可能性があります。実際、オックスフォード・インターネット・インスティテュートのマーク・グラハム氏は、「豊かな国は自分たちの大部分を自ら定義づけることができ、貧しい国は大部分を他者によって定義づけられてしまう。」と言っています。マクロレベルとミクロレベルのどちらにおいても、限定的もしくは一方的な情報の流出の影響は計り知れません。また、最も軽視されているグループは、ほとんどの場合、デジタル空間への参加に大きな障害を感じている人々なのです。

言語とコミュニティが出会う場所

より豊かな言語の多様性への挑戦は、デジタルの分野に限ったことではありません。国際的な話し合いの場も、特に課題を抱えているといえます。しかし様々な声、特に過小評価されているコミュニティからの声が会話を先導し意見を伝えられるスペースをつくることには、明確な利点があるのです。

RightsConの規模や活動範囲が広がるにつれ、私たちはコミュニティ内の格差を無くしていくことの難しさと重要性を認識してきました。今までに言語とインターネット人権問題の局在化、そして人道的目的のためのデザインにおけるコミュニケーションなど、様々な視点に着目してセッションを行ってきました。誰でも参加可能で公正であることは、このプログラム全体の中に織り込まれているべきだと私たちは考えています。そのため、中東および北アフリカ地域での最初のサミットであるRightsCon Tunisの2019プログラムにおいて、私たちは言語という要素を追加し、セッション主催者は英語に加えて、チュニジアとマグレブで話されている最も一般的な言語であるフランス語とアラビア語で提案を提出しました。最終的に英語以外のセッションを、フランス語で3回アラビア語で12回、計15回開催しました。

しかし私たちはこれらの取り組みを、全体のプログラムのほんの一部だととらえています。今年も、私たちはRightsCon Costa Ricaをより包括的でアクセスしやすいものにするための取り組みを続けていきます。主催国とその他のより広い地域のコミュニティに連絡するため、提案提出フォームに関する特定の質問をスペイン語で送信できます。私たちは、ウェブサイト上で質問(FAQ)への回答更新を継続し、RightsConに関する詳細な情報をスペイン語で提供していきます。また言語の多様性に関する提案をいつでも歓迎し、他の言語でセッションを実施します。チュニスと同様に、メインステージの全ての会話を同時に翻訳する予定です。

聴いて、学んで、声を上げる

コスタリカは、RightsConの言語に対するアプローチを改善するのに理想的な環境です。国は言語的にも民族的にも多様であり、スペイン語に加え、住民は少なくとも5つの現地語と3つの手話(LESCO、コスタリカ手話、およびブリブリとブルンカの現地語に対応する2つを含む)を話します。

 世界中で、2,500を超える言語(その大半は先住民族の言葉)が絶滅の危機に瀕しているか、その危険があり、これらの危機は先住民の歴史的抑圧と権利剥奪によって悪化しています。国連(UN)は注意を喚起するため、2019 年を先住民族言語の年と宣言しました。先住民の文化を保護するには、オンラインリソースとデータベースを使用して先住民の知識を収集する必要があります。これは、デジタルとデータガバナンスの管理が言語の生存の問題と直接交差することを意味します。インターネット上の先住民族の言語に関するラテンアメリカフェスティバルのような会議は、接続性とアクセシビリティに関する議論の際の先住民族の権利のより強い統合へと道を開くでしょう。

2018年以降、参加者からの提案に応え、デジタル著作権運動における先住民の意見の表現を改善することにも取り組んでいます。私たちのチームは、RightsConでの先住民コミュニティの存在と参加を拡大するために、8か国の代表者と相談しました。これらの取り組みにより、RightsCon Tunisでは先住民データの主権に関する特別な参加者主導のセッションが行われ、主要な会議での調整と参加の増加に専念するワーキンググループが作成されました。2020年からも、これらの努力を基に私たちのプログラムを構築し、デジタル時代を生きる先住民の権利、文化、伝統を守るために働く人々のためにプラットフォームを提供し続けます。

 RightsConコスタリカへの参加を促進するというミッションの一環として、障害者の権利、アクセシブルなデザイン、支援技術に焦点を当てたセッションの提案も積極的に模索しています。全体として、技術コミュニティは、目が見えない人や耳が聞こえない人、言語障がい、視力障がい、運動能力の低下などを持つ人々の特定のニーズに対応するために、もっとできることがあります。人権中心の設計を強調することは、技術者や企業の能力主義を防ぐ方法の1つです。メンタルヘルスケアについても、ユーザーの言語で正確な医療情報へのアクセスが増えれば、うつ病などの目に見えない病気の特定と治療に直接影響を与える可能性があります。そのため、これらの課題にも重点的に働き掛けていく価値があります。

言葉から行動へ

言語は、デジタル時代の人権のあらゆる側面とかかわっています。テクノロジーが一転に収束し、セクターや業界全体での変革を推進するにつれ、RightsConが議論から完全に取り残された人や取り残された人のためのプラットフォームとして機能することは非常に重要なことです。言語の多様性は、思考の多様性を促進するだけでなく、先住民コミュニティ、障がいのある人々、そしてその他の疎外されたグループが自分の物語に対する権力と権威を取り戻すことを可能にするのです。

それと同時に、リソース、資金、人材などの不足は、私たちがやろうとしていたすべてのことの達成を防いでしまいます。これらの漸進的なステップでさえ、私たちのオンサイトでの翻訳サービスの提供や、参加者の母国語で話し合うためには、未だに課題が残されているのです。RightsConコミュニティとともに、私たちはより多くのことを成し遂げ、良くするため、これらのプロセスを通じて学び、意見を聴いていこうと考えています。

スペイン語でのセッションの開催、またはデジタル時代の言語に関する議論の促進に興味がありますか?

RightsConコスタリカの提案募集は2020年1月14日まで開催されますので、ご提出ください。提案成功のためのガイドを読んでプログラムプロセスの詳細を確認するか、rightscon @ accessnow.orgに質問をお寄せください。私たちはコミュニティのメンバーからの意見を募集し、セッション提案フォームが言語やアクセシビリティの面で参加が困難な場合、私たちのチームがお手伝いします。

より多くの人に私たちの声を届けてくれる人を探しています。

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